『ある落日』、『あした来る人』
2006年06月27日
先週の金曜日の晩に、文庫本を二冊買いました。なんとなく纏まった時間ができそうで、間をもたせるために久しぶりに活字を読もうと思い、購入しました。どちらも私の大好きな井上靖の作品なのですが、今まで読んできた井上靖の作品は全て歴史小説でした。今回は、何故か気が変わり、初めて「普通の」小説を読むことにしました。
本当は時間を少しずつ割いて、じっくりと読もうと思ったのですが、何のことはない、結局四日間で二冊とも読み終えてしまいました。どちらも五百頁以上ある厚めの小説だったのですけどね。
それぞれの作品の内容についてはまた別の機会に話すとして、今日『あした来る人』を読み終えた後、久しぶりに気持ちに清涼感が戻ってきました。長いこと、私の周りに恐ろしく激しく抗しがたい動きがあり、それに伴って自分の気持ちも激しく振り回されたりしており、完全に自分自身が乾ききってしまっていました。それによって摂食障害にもなりましたし。
本は良いものです。手にした瞬間からその中には物語が綴られており、その物語は読み終えるまで変わることなく存在し、決して裏切ることがありません。
人生は、信じることの出来ない物語です。信じて良いものなど無く、どれだけ信じても裏切られますし、信じれば信じただけ裏切られた時の傷は深くなります。どんなに信じても粗筋は歪められてしまうし、信じた結末に辿り着けないのが人生な気がしています。
ずっとそんな気持ちに陥っていたので、今の私にはじっくりと本を読むことが一番の救いになっていたのかもしれません。
食わず嫌いで井上靖の作品は歴史小説しか読んできませんでしたが、この二作品とも、とても良い作品でした。特に、『あした来る人』に関しては、読み終えた後に「くすんだ」感動が包み込んでくるような感じで、じわりじわりと自分の中に活気を与えてくれています。
彼が奏でる文章は、相変わらず凛とした透明感があり美しく、「井上節」とも思える独特の話の展開は、どの作品を読んでも気持ち良く自分の中に入ってきます。この人の人物描写や台詞の組み立ては、本当に素晴らしいものがあります。しばらく、小説を買い漁って読む日々が続きそう。
尤も、それでも敵わないくらい深い傷が自分の中には刻み込まれており、それが何時になったら治るのかは不明ですが、今の私には心地よく逃避できる世界があり、それはそれで嬉しいことだと思っています。
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